第1章
「鈴木やらかし物語」
会社員0点の天才
他人を使って問題をクリア
他力本願に目覚める
鈴木さんが仕事上手になった、キッカケは?
そもそもですが、子供のときからワガママで、「やりたくないことはとことんやらない人間」でした。幼稚園、小学校の頃から、すごく違和感を感じていたんですよ。自分の嫌いな食べ物を食べさせられること、嫌いなことをやらされること。全員を平均値まで上げてこようとする方針も。
幼少期からストレスだらけで、ガマンして乗り越えるっていうことができなかったんです。
そこで「いかに他人を使って問題をクリアするか」ってことをとにかく考えてました。早い話、他力本願スタイルです。
例えば、学校の給食にも嫌いな食べ物ってあるじゃないですか。先生は「好き嫌いはいけない」と食べさせようとするけど、わたしは絶対に食べたくないんです。それでどうするかっていうと、代わりに食べてくれる人を探します。先生が見ていない所で友達に食べさせるんです。
ただ食べさせるんじゃなくて、「代わりに何かやってあげる」。わたしは算数が得意だったので、代わりに算数の問題を解いてあげてたんですよ。
小学校のときから「課題の交換」をしてたんですよね。「自分はコレできないから、代わりにコレをやってあげるよ」って。そうやってクリアしてました。
苦手なことは他人を使ってクリア
読書感想文も苦手で、そもそも本が読めなかったんです。学校の推薦図書などもしっかり読めない。簡単な作文ですら書けないんです。自分で書こうとしていると終わらないんですね。わたしにとっては無理ゲーです。その無理ゲーなヤツに「それでもやれ」っていう先生も、どうかなと思いますけどね。
それはどうやってクリアしたんですか?
これも友達にお願いしました。高校生の時は、カワハラくんっていう友達がいて、彼は本をサクサク読めて文章も割と上手い。そのカワハラくんに全部お願いしてたんですよ。2000円で読書感想文を書いてもらいました。
その間、わたしは何をやるかっていうと、バイトです。高校生にできるバイトなんて限られてますよ。セブンイレブンの当時の時給って言ったら700円です。カワハラくんに2000円払うには、3時間バイトをすれば、分かりやすく2100円貰えるんですよね。その間「いらっしゃいませー」とか言って、運ばれてきたお弁当の入れ替えや本棚の整理をしたり、煙草を詰めたり。そんなことを3時間やっているだけです。
コンビニのバイトって、当時のわたしにとってはそれほど苦じゃなかったんです。レジ前のおでんを作ったりしていれば、あっという間に終わる。バイトには同世代の女の子もいたから、おしゃべりしたり結構楽しかったんですよね。「今日のシフトはあの子か」みたいな。
それで2100円ゲットできるわけじゃないですか。そのお金をカワハラくんに払えば、もう読書感想文はでき上がっているんですよ。こういうふうに、問題解決していましたね。
自分のやりたくないことは、徹底的にやらないようになってました。
負けず嫌いの幼少期
日本の学校って、苦手なことは多くやらせて、全員を平均値にもっていこうとしますよね。
それがとにかく、ストレスの要因でした。ただ、負けず嫌いなところもあって。幼少期は、マラソン大会では1位を取りたいタイプでした。でも、一度も1位になれなくて、いつも2位。「ダイスケ」という圧倒的に速いヤツがいたんです。親子で朝練してる、ガチのヤツ。ガチ過ぎて、もう絶対に勝てない。だからわたしはずっと2位だったんですよ。小学校から中学校まで。でも全力で勝負した結果、もし負けたとしても、やることやってのことなので、悔しさよりも、清々しく終わって全く引きずらない性格です。いつしか、ナンバーワンには興味なくなりましたね。
2位でもすごい!体力あるんですね。
体力は平均以上はあったかもですね。あと、好きな教科は、自然と勉強しました。でも、5教科のなかで国語だけ成績が悪く、5段階で2か3です。活字を読むのが苦手です。
でも他の科目はストレスなく、テスト前はしっかり勉強するので、5だったんですよね。バランスが悪いせいで、担任には成績の悪い教科に対して、怒られるんです。しかも、そういうときに限って担任が国語の先生なんですよ(笑)。もうね、授業中にイジメられてましたね。あとは「成績が悪いから、オマエは本を読め」って先生がしつこいんです。その反発心から、絶対に本は読まないってコミットしてました。イジメからの反抗です。
イジメからの反抗ですか(笑)。
授業中、自分ばっかり当ててくるんですよ。「鈴木、鈴木」って。とにかくイジメてくる。それがイヤすぎて、嫌いなことはとことんやりたくなくなっちゃいました。だから不貞腐れて、国語の授業中は寝てましたね。それでまた、先生にイジメられるという悪循環(笑)。
そもそも、その学校教育というものにはずっと違和感を感じてましたね。とにかく「嫌いなことはやりたくない」という凄いこだわりを、小さい頃から徹底して持ってました。我慢してやるって、もう完全に無理な性格です。結局、我慢してやっても、良い成果は得られないです。
会社にも馴染めなかった
その思考のまま、会社員になったんです。まあ…… 全く上手くいかないですよね。まず何がイヤだったかといえば、上司が先輩ヅラで偉そうにしてる姿が生理的に無理。
「なんだコイツ、そんなに偉いんか?」って思っちゃうんです。先輩に対するリスペクトが「ゼロ」なんですよね。でも、別にすべての先輩を批判しているわけじゃなくて。こういう言い方は申し訳ないんですけど、自分より能力低いのに、偉そうにしてる人を尊敬できないんですよ。
「オレの方が先輩なんだから、オマエ、オレのいうことを聞けよ」みたいなタイプが大っ嫌いなんですよね。
「コイツ、ショボいな」って思ったら、もうその先輩に指示を出されても動けないんです。「コイツ、大したことないのに」って思っちゃいます。先輩から見るとすごく扱いにくい人間だと思いますね。
鈴木さんは、取り扱い注意ですね(笑)。
めちゃくちゃ扱いにくかったと思いますよ、わたしのこと。部長・幹部クラスにやたら呼ばれてました。態度だったり、考え方が合わなくて、「先輩の言うことは絶対だろ」とか、「オマエはコイツの部下なんだから言ったこと全部やれ」って。もう「雇われ向いてない性格」確定ですよ。
転職14回の会社員時代
とにかく「生産性がないことはやりたくない」んですよね。
子供のときからずっと、仕事をさっさと片付けることを徹底してました。なので、仕事効率が悪いリーダーを見て、「なんでコイツ、こんなに無駄なことやってるの?」って思うと、仕事中でも動けなくなる。思考が止まっちゃうんですよね(笑)。
「自分が納得のいくことにしか行動できないタイプ」だったんです。社会人は本当に続かなかったですね。4年10か月の会社員時代があったけど、14回転職してるんですよ。
14回!すごい記録ですね(笑)?
ほとんどが派遣とアルバイトですけど。どれもほぼ続かなかったですね。
結局、環境を変えても課題は変わらないんですよ。自分自身の思考が変わってないので、「この会社嫌だ」って思って違う会社に行っても、結局は一緒なんですよね。「また扱いにくいヤツが入ってきたな」みたいに思われてるでしょうね(笑)。
期限がきてクビ切られるか、自分から脱落するかのどっちか。その繰り返しでした。
もしどこかの会社とマッチしてたら、今とは働き方が変わっていましたか?
ん〜それは、どうでしょうかね〜。あと、わたしはとにかく「サボりたがり」なんです。仕事中でも「トイレ行ってきます」ってトイレで携帯触っちゃう人間だし、30分くらい帰ってこないんですよ。トイレで寝ちゃったり。そういう、組織から見て大きくズレてる行動ばかりやってました。本当に、雇われ人としての才能はゼロですね。とにかく「嫌いな仕事だ、やってらんないなー」って思っちゃう、マジでどうしようもないヤツなんです。
会社で副業する鈴木
サボったときは、ゲームとか漫画で遊ぶタイプですか?それとも副業をやるタイプですか?
どっちもですね。遊びもするし、副業もやってました。例えば、会社で何をやるかっていうと、わたしは当時、ヤフオクで転売してたんです。いまの時代ならメルカリ的な不用品転売の副業ですね。プチプチで商品を丸めて、段ボールで包んで、紙袋に入れて、家で梱包し、それらをゴッソリと会社に持っていってました。
それで、昼休みに郵便局に行って郵送作業をしてたんです。会社の仕事中に抜けて、ちょっとサボって副業する、みたいなこともやってましたね。会社から見たら、こんなヤツは雇わない方がいいんですよ。
まあ、私もそう思います(笑)。
自分自身でも「こんなヤツ、雇いたくないな〜」といつも考えながら働いてました。
会社の経営者だったら、わたしみたいな人間は絶対に社員にしないです、はい(笑)。
時給という弊害
そもそも、「固定給という考え方が、そもそもよろしくない」とずっと思っています。時給、日給、月給っていうのが、仕事によっては弊害だと思います。
たしかに、決まりきった時給では、やる気が起きにくいかもですね。
工場のライン作業とかだったらいいと思うんですよ。「1分間に何個のせる」など、ノルマが決まっている仕事であれば、時給でもいいですよね。トラックの運転手さんも、分かりやすくずっと決まったルートで運転をしていればいいじゃないですか。そこに対するのは、拘束時間なので、時給や日給、月給でいいと思います。
時給にすべきものと、そうじゃないもの、その線引きが曖昧なことが多いです。鈴木は、経営をするようになって判別できるようになりましたが、そこの判断の曖昧さがある会社が多い印象です。
雇われている時から、そんなことをずっと考えてました。とにかく働く仕事、バイトに対して、客観的な目線で違和感が多かったです。「あれ?あいつサボってるなー」と思ったら、せっかく真面目にやってる自分がアホらしくなったり、モチベーションの低下も体験しました。時間給の残業中に抜け出して、喫煙所へタバコを吸いに行くような偉そうな先輩派遣社員は、いまだにしっかり目に焼きついてます。経営者がそこはしっかり管理して見ないとって。そういう目線で、「自分が管理する側ならこうするのにな〜」って考えてみたり、経営者目線で、社員教育をシミュレーションするのは好きですね。
アメリカみたいな成果型が良いですよね?
そうです。基本的に実力主義の成果型がいいと思います。なぜかというと、わたし自身がサボって搾取しようと思ってたタイプだから、雇われる側の気持ちもよくわかります。サボれるだけサボって、「いかに月給30万貰えるかゲーム」を攻略していたタイプなんですよ。別の名は「どこまでサボれるかゲーム」とし、どうせ給料は上がらないしって思いながら、真剣に研究してましたね。
そこから、自分が社長になったら従業員は雇わない方がいいという発想になりました。なので鈴木は基本的に正規雇用社員を一切雇わないんです。雇ってもアルバイト従業員まで。人にしっかり仕事をお願いするなら、業務委託、成果型の外注さんに報酬を払う方が良いですね。
会社員としては0点の「天才」
でも客観的に見れば、当時の「会社員・鈴木」って、どこか突き抜けてもいるんですよ。
こういうタイプって、扱い方を間違うと生産性がゼロ。会社員としては無能で0点。でも上手く利用したらすごい仕事をするんです。逆転の発想で「どうやったら鈴木をフルパフォーマンスに発揮できるか」っていうことを自分自身ですごく考えた結果、「他力本願9割メソッド」という考え方の結論に至ったのです。この書籍を最後まで読んで下されば、この非常識な成功哲学がバッチリと理解できるようになってます。
特性を活かせば、みんな「天才」
今でも、日本には「嫌なことをできるようになるのが良い」みたいな一般精神論的な雰囲気がありますね。だから逆に、鈴木さんみたいに「嫌なことはやらない」っていう思考の人が突き抜けるわけですね。
そうですね。とにかくワガママですよね。バランスはあんまり良くない(笑)。でも、バランスが取れている人で、優秀な人なんてそうそういないんじゃないでしょうかね。
どんな天才も、何かしら欠落していると思ってます。欠点を突いても生産性は高まらない。結局は人の良いところを見て、仲良く付き合うのが望ましいと思ってます。わたしは、とにかく雇われには向いてないと確信したし、他人に言われて動くっていうことがそもそも無理なんだなと思いました。
友達ができにくいタイプ
あまりにもワガママが強すぎるので、あんまり人間付き合いが上手いタイプじゃないんです、わたし。今ではこうやって仲間に恵まれているので、そういうふうには見えないとよく言われますけど。幼少期からわたしの欠点を指摘されたりして、そういうのが当たり前の中で学校生活を過ごしてきたので、結局クラスメイトにも同じことをして、また指摘されたりの繰り返し。これも負のループです(笑)。
えー、そうは見えないですよね。
学生時代、グループ活動や団体行動はできませんでしたね。休憩時間のツレション、昼休みにみんなで弁当を食べる、ああいうのも正直無理なんです。学校だと「トイレ行こうぜ」ってみんなで一緒にゾロゾロ行くじゃないですか。
あぁー(笑)。ありましたね。
「次は体育の授業だから体育館行こうぜ」みたいな、もうあの輪に入るのが、なんだか気持ち悪くて……
。輪の中に入っていても、違和感しかないんですよね。謎のリーダーが自然とできて「なんでコイツが偉そうにしてんだろ」みたいな。よく分からない学校カースト制度、全国どこにでもあると思いますけど。学校っていう単位で見ていけば、わたしは多分、底辺層的なところだと思うんですよ。学校の、いわゆるイケてる系には、気持ち悪くて絶対に属せないし。かといって、友達がいないと思われるのも嫌なんですよね。
あっ、嫌ではあるんですね。
「あいつ友達いない」と思われるのは、孤独感があって嫌ですね。例えば、みんなでお昼ご飯食べる時に、毎回あの輪の中には入りたくない。かといって一人で食べていて「あいつ孤独じゃね?」って思われるのも嫌。だから、その場からいなくなるってことをやってましたね。そうすれば、人の目に映らないので、そもそも孤独とも思われないですし。高校生のときは昼休みに家に帰ってました。ちょっとでも良いから、家でゆっくり過ごそうと思って。そのまま寝ちゃって、夕方になってることも……(笑)。
(笑)。鈴木さんと同じような思考の人、周りにいたんですか?
仲の良いヤツは何人かいましたよ。「その考え方が面白い」って賛同してくれる人もいました。
でもいつもベッタリな集団を作る気は全くなかったですね。みんなで戯れる気も全然ないし。もし自分の周りがキモ集団になりそうなら、自分から脱退します。イベントが嫌いっていうわけでもないんですけどね。ただ、常にベッタリっていうのが気持ち悪くて。自分の感情を押し殺してでも、ここに属していかなければいけないみたいな、そういうのが苦手というか。
たまに、みんなで集まって「楽しかったね、じゃあまた居場所に戻りましょう」っていうくらいがちょうどいい。都合の良い、お互い割り切った関係みたいな(笑)。
学校にはそれがないんですよね。一人でいるのか、みんなといるのか、っていう極端な社会じゃないですか。集団生活だと、合わせる顔がいつもみんな一緒だから仕方ないんですけどね。狭い社会だと視野も狭くなります。とにかく学校や会社など、小さい単位での生きづらさはずっと感じてましたね。誰かが作った何かに属するのは無理なんだと思います。
社会不適合人間・鈴木
鈴木さんは組織に、馴染めなかったんですね。
超理不尽だと思ったことがあって。中1のとき、音楽のテストで94点を取ったんですよ。他のクラスメイトの点数と見比べてもクラスで上位でした。学年でもトップクラスの点数でしたが、それなのに成績表は、5段階中3を付けられたんです。これは明らかに、先生からの嫌がらせ?イジメ?なのかと。
スクールハラスメントみたいな?
そうですね、わかりやすいスクールハラスメントな印象でした。若い新卒の女性の先生で、クラスの男子がみんなでその先生をイジりまくってたんですよ。見た目も美人だし、若いし、オッサンの先生とは授業態度がまるで違う感じで。そんなことよりも、音楽の成績さえよければ別にどうだって良いと思ってたので、大人しく授業受けてました。でもクラスの男子が授業中にウザいくらいにイジってたから「あいつも一緒」と捉えられてたようです。
成績に文句をつけに言ったら、「授業態度が原因」ってことで、クラスの男子のほとんどが成績を下げられたことが判明して。「あいつらのせいで自分も下げられた」と。それからか、こういう学校成績って全く信用できなくなりましたね。「なんなんだ、この理不尽さは?」みたいな。テストの点で証明してるのに、周りの悪影響で自分も巻き添えになって、結局評価ガタ落ちみたいな。周りがみんなテロリストだったとして、「なんでオレも一緒にテロリストになってんの?」みたいな感じですよね。「オレ、無罪なんだけど?」みたいな。無罪を主張しても「注意しないと同罪」とか、「証拠はあるのか?」って言われちゃう感じです。
学校教育はいつも違和感の連続で、何かあれば犯人捜しをするんですよね。それでは意味がない。わたしの中での道徳の授業は、先生の一方的な価値観の押し付けで、全然道徳になってなかったです。まあでも、これも仕方ないんですよね。学校の先生も、社会経験のない、学校という狭い世界しか知らない人達の集団なので。学生時代、会社員時代、とにかく違和感しかなかったです。誰かが作った社会には馴染めなかったんですよ。
鈴木さんの過去の話は、常に違和感まみれの物語ですね。
社会不適合人間・鈴木です。人のいうことを聞かない、クラスメイト・先生・上司から嫌われる、出世できない、上手く立ち回れない(笑)。誰かが作ったレールの上では、常に脱線の連続。やらかしまみれの過去ですね。